株式会社アーリークロスは加東市で保険代理店業を営む企業です。代表取締役の田中洋一さんは、創業以来21年間で3万件もの飛び込み営業を経験し、現在は約1000人のお客様との信頼関係を築いています。
また保険業のかたわら、アパート賃貸事業、農業、DIYなど多彩な事業を展開する異色の経営者でもあります。
今回は田中さんと従業員の小山さんにお話を伺い、飛び込み営業で培った人とのつながりと、趣味を事業につなげる独自の経営スタイルについて語っていただきました。
放浪から保険業へ。結婚を機に始まった新たな人生

━━会社の経営理念について教えてください
(田中さん)
弊社では4つの経営理念を掲げています。まず、お客様の夢の実現(成功・発展)をサポートします。そして、お客様の想いに向き合い、お客様の求めていることを感じ、それにふさわしいサービスをご提供できる会社を目指します。
また「コンプライアンスを遵守し、永続的にお客様に安心をご提供できる会社を目指します」。最後に「スタッフ一人ひとりが向上心を持ち、新しい事にチャレンジし、成長する社員・成長する会社を目指します」ということを大切にしています。

━━「アーリークロス」という社名の由来は?
(田中さん)
サッカー用語の “アーリークロス” から取りました。サイドでボールを持った選手が、相手ディフェンスが整う前にゴール前へクロスを入れるプレーです。お客様の成功に向け「最適なタイミングで最高のアシストをする」という想いを込めました。
━━会社の歴史と背景を教えてください
(田中さん)
1997年に阪南大学を卒業後、キャタピラー三菱で建設機械の営業を5年ほどやっていました。2002年に退社して実家のガラス業を継ごうと思って西脇に戻ったのですが、半年ほどで「ちょっと向いていないな」と感じて、2003年3月の結婚まで放浪のような生活をしていました。
━━放浪から保険業への転身は大きな変化ですね
(田中さん)
結婚して働かなければならなくなったとき、営業の経験を活かせて、お金がなくても独立できる仕事が保険だったんです。服と靴さえあれば始められますからね。東京海上の制度で、3ヶ月ごとにノルマを達成すれば次の3ヶ月の資格をもらえるシステムで、それを3年間続けて2006年に正式な代理店資格を取得しました。
━━アーリークロス設立の経緯を教えてください
(田中さん)
2006年9月に株式会社アーリークロスを設立しました。2007年に加東市上滝野で事務所を開設し、2012年に現在の加東市上中に移転しました。
1日200件、半年で3万件の飛び込み営業

━━創業当初はどのような営業スタイルだったのですか?
(田中さん)
何か商売を自分で行いたいと考えましたが、知識も経験もお金もなかったんです。そんな中で出会ったのが東京海上の代理店研修制度でした。最初は知識も信用もなかったので、とにかく飛び込み営業しかありませんでした。1日200〜300件、半年で3万件くらい回りました。西脇市内だけでなく、兵庫県全域を歩いて回っていましたね。
━━それは相当な数ですね。断られることの方が多かったのでは?
(田中さん)
そうですね、200件回って199件は断られるのが当たり前でした。でも断られて当然なので、たまに1件話を聞いてくれる人がいると「ありがたい」という気持ちでした。旅行気分でいろんなところを回って、「この家にはどんな人が住んでいるんだろう」という好奇心で続けていました。
━━そんな中でも続けられたのはなぜですか?
(田中さん)
半年くらいすると、保険に加入していただいたお客様から「商品が欲しかったから加入したのではなく、応援しようと思って加入した」という声をいただいたんです。お客様からの励ましの言葉が大きかったですね。「昨日も今日も頑張ってたよね」「田中くんやったらできるで」と声をかけてくれる方がいて、そういう期待に応えたいという気持ちで頑張れました。
しっかり頑張ってお客様の期待に応えないといけないと自覚し、加入していただいたお客様にもっと恩返しができるよう、「田中で入ってよかったな」と思ってもらえる自分にならないといけないと感じました。
趣味が事業に発展。農業から大工まで多彩な挑戦

━━現在は保険業以外にもいろいろな事業をされているそうですね
(田中さん)
はい、趣味の延長で始まったものが多いです。2017年に加東市内で賃貸アパートを購入し、2023年には加東市内で賃貸事務所も購入しました。アパートはDIYで改装し、賃貸事業をしています。また1000坪ほどの畑でジャガイモなどの野菜を作っており、今年は400キロのジャガイモができました。
━━400キロはすごい量ですね!
(田中さん)
朝5時から7時まで畑仕事をして、9時から保険の仕事という生活をしています。お客様にもジャガイモをお配りすると、そこから新しいつながりが生まれることもあります。知らない人より知っている人から保険に入りたいという方も多いので、そういった人間関係が仕事にもつながっています。
━━賃貸事務所業も始められたそうですね
(田中さん)
3階建ての建物を購入して、全部壁を抜いたりDIYで改装しました。大工仕事も全然下手ですけど、やりながら覚えています。雨の日は大工、晴れた日は畑、そして平日は保険という感じで、いろんなことにチャレンジしています。
人見知りだからこそ飛び込み営業が向いている

━━意外ですが、田中さんは人見知りだとおっしゃっていましたね
(田中さん)
そうなんです。飛び込み営業の人って、じつは人見知りが多いんですよ。10分間のトークで勝負が決まるので、いつも同じことを話せば良いのです。でも、毎日同じ人と会うとなると、「昨日この話をしたな」とプレッシャーを感じてしまいます。
━━2回目のお客様にお会いするときが一番苦手だと?
(田中さん)
そうですね。事前に情報をいただくと、準備をしないとうまく話せないんです。提案書も10個くらい作って行きます。3つで十分だと思うんですけど、不安で作り込んでしまいます。
━━でも、それが田中さんの強みでもありますね
(田中さん)
100人に1人くらいは僕のことを好きになってくれる人がいて、そういう方との関係を大切にしています。深く付き合うのは苦手ですが、広くいろんな人とつながりを持つのが得意です。お客様同士をつなげることもよくありますね。
お客様の人生に寄り添う仕事

━━保険業をやっていて印象的なエピソードはありますか?
(田中さん)
保険という商品は入ってすぐには効果や満足感はありませんが、万が一の時に本当に入ってよかったと思える商品です。偶然事故等に遭ってしまい、困り悩んでいるお客様と一緒に、事故に遭う前の状態に少しでも近づけることができる唯一のものです。解決したときにお客様から笑顔や「ありがとう」の言葉をいただけたときには、本当にこの仕事でよかったと感じます。
事故の対応でお客様がパニック状態のときに電話をいただくこともあります。そういうときに人の本当の姿が見えるんです。普段怖い人がすごく優しくなったり、逆もあったり。パニック状態の方に「ありがとう、安心した」と言っていただけると、この仕事の意味を感じます。
━━人生の重要な場面に立ち会うお仕事ですね
(田中さん)
一緒に謝罪に行ったり、電話で謝罪したり、力になれることもあります。冠婚葬祭、喜怒哀楽を人の何倍も味わえる仕事だと思います。時には土下座で謝ることもありますし、すごく喜ばれることもあります。人の内面を知ることができる、とても人間的な仕事だと感じています。
50歳で新たなスタート。次の10年への挑戦

━━現在50歳ということですが、今後の展望を教えてください
(田中さん)
47歳くらいまでは「50で終わり」と思っていたのですが、50になった途端「ゼロ歳のスタート」という気分になりました。新たなスタートの気持ちで、また飛び込み営業を始めたり、新しいことにチャレンジしたいと思っています。
━━今後どのような人材を求めていますか?
(田中さん)
保険販売は直接お客様に販売を行いますが、すぐにはお客様の満足はいただけない商品なので、ゆっくりと地道に多くのお客様にPR活動ができる方を求めています。
僕は広く浅くのタイプなので、お客様と深く付き合ってくれる人材がほしいですね。飛び込みでお客様になっていただいた後の定期訪問を丁寧にやってくれる方がいれば最高です。
また営業経験がある方、加東市や近隣の市の方であれば理想的です。あとは同世代の方も必要ですね。20代30代のお客様にはやはり同世代の営業の方が話しやすいと思います。
━━理想的には息子さんに継いでもらいたいですか?
(田中さん)
今子供が21歳なんですが、27、28歳くらいで帰ってきてくれたら、うまくバトンタッチできるかなと夢見ています。その間にもう一人、つないでくれる人がいてくれたらいいですね。
事務所を支える頼れるパートナー

続いて、従業員の小山さんにお話を伺いました。事務を担当されながら、田中さんの多彩な事業をサポートされています。
━━入社のきっかけを教えてください
(小山さん)
2019年に求人を見て応募しました。実は面接のときは何のお店かわからずに来ていて、「場所は分かってるけど、何の店やろう?」と思いながら来たら保険屋さんだったんです(笑)
━━職場の雰囲気を教えてください
(小山さん)
社長は本当にいろんな話をしてくれて、生い立ちから今まで何でも知っています。畑にも巻き込まれて楽しませてもらっています。ジャガイモやきゅうりなども持ってきてくれるので、とても働きやすい環境です。
━━田中さんの印象はいかがですか?

(小山さん)
頭が良くて、予想とかが大体当たります。「あの人は今日来ると思いますか?」みたいなことを聞いても、当たるんですよ。最初は厳しいと思っていましたが、実際はとても優しくて、ミスをしても優しく対応してくれます。
━━田中さんが農業や大工を始めてから変化はありましたか?
(小山さん)
農業やってくれてよかったです。朝5時から7時まで畑をやって、9時に来た時点でもう疲れているので、ちょっと落ち着いています(笑)。昔は売り上げをもっと上げようとギラギラしていましたが、今はそのパワーが分散できるようになって、働きやすくなりました。
━━業務内容を教えてください

(小山さん)
電話応対や書類作成が主な業務です。更新手続きや行政関係の保険も担当しています。
(田中さん)
僕が外回りをしている間、事務所で電話を取ったり、書類を処理してくれたりと本当に助かっています。行政の保険なんかは9時から5時の時間に対応しないといけないので、僕が外に出ていると対応できないんです。
━━お二人の連携について教えてください

(田中さん)
本当に事務所を完全に任せられるので、僕は外回りや趣味の時間に集中できます。ファックスやメールのチェックも僕が外回りだとなかなかできないので、そういったものを迅速に対応してくれています。
(小山さん)
メール契約や電子署名での契約も増えてきているので、そういった新しい契約方法にも対応しています。
(田中さん)
事務所にいてくれるおかげで、公共機関とのやりとりが広がりました。ファックスやメールで見積もり依頼が来ても、すぐに返答してくれるので、そこから新しいお客様も増えています。

株式会社アーリークロスは、人とのつながりを大切にしながら、常に新しいことにチャレンジし続ける企業です。田中さんの「人が好き」という想いが、21年間の事業継続と1000人のお客様との信頼関係につながっています。そして小山さんの的確なサポートがあってこそ、田中さんが安心して外回りや新しい事業に挑戦できる環境が整っています。
お客様の成功をサポートするという経営理念のもと、保険業を通じて地域の皆様の人生に寄り添い続ける、温かみのある企業として今後も成長を続けていくことでしょう。
会社名 | 株式会社アーリークロス |
所在地 | 〒673-1464 兵庫県加東市上中328-1 |
設立 | 2006年9月25日 |
事業内容 | 損害保険代理店業・アパート賃貸業 |
代表取締役 | 田中洋一 |
※本記事に記載されている個人的な内容については、ご本人様の同意を得たうえで掲載しております。