誰もが挙げたい結婚式を、かなえるために
長い歴史の中で、幾度となく転換期を迎えた日本の結婚式。1960(昭和40)年代も半ばに差しかかろうとする頃、近隣の神社や公民館で行っていたお披露目が、式場やホテルで披露宴を開くスタイルへと移り始め、衣装も空間も和から洋へと大きく変化していった。
そんな節目に産声を上げた株式会社ブライダルサロン寿(以下、ブライダルサロン寿)は、北播磨エリアの結婚式を大きく変革させた第一人者だ。創業から50余年、一生に一度の晴れの日を、常に時代を先取るサービスとホスピタリティで支え続けてきた。その数は数万組にもおよび、中田善大社長と妻の清子専務でさえも正確な数字を把握しきれないほど膨大な数に上る。
創業のきっかけは、善大社長と清子専務の結婚式だった。1966(昭和41)年当時、挙式でまとう打掛も、お色直しで装うカクテルドレスも満足なアイテムが揃わず、婚礼衣装に関わるレンタルビジネスマーケットの不十分さを痛感した善大社長と清子専務。
「自分たちの結婚式で感じた不自由さを、これから挙式を挙げるカップルたちに味わってほしくない」
そんな想いから、1967(昭和42)年3月、西脇市で総合ブライダルレンタル事業を創業。衣装をはじめ小物、ヘアメイクにいたるまで、トータルコーディネートによるレンタルシステムを構築し事業をスタートさせた。
その後、成人式衣装のレンタル業務にも事業を展開。1987(昭和62)年8月に株式会社ブライダルサロン寿を設立後、1991(平成3)年には加東市へ移転。現在の本社を拠点として構え、姫路市、加古川市にも支店を出店。常に最先端をゆく新しいサービスとホスピタリティで、各事業に取り組んでいる。
北播磨のブライダルシーンをけん引し続ける総合力
総合ブライダルレンタル専門店としての業務の中心は、婚礼や成人式、その他の儀式に必要な衣装の総合レンタル。日本のブライダルファッション界における第一人者、桂由美氏の手がけるウエディングドレス「ユミカツラ」をはじめ、ブライダルサロン寿のオリジナルドレスを中心に約数千着以上をラインナップ。
また成人式衣装では、トレンドを押さえたデザインから人気の高い古典柄まで、様々な振袖が色とりどりにフロアを埋める。
そうしたブライダルシーンのサポートは、衣装関連だけにとどまらない。結婚式場選びを筆頭に、結婚に関するあらゆる相談や、式当日までの総合プロデュースも手がけ、「ブライダル図書館®」と名付けられたサービスとして、結婚に関する調べものや、招待状、引き出物の手配、披露宴での演出に関する相談なども引き受けている。
さらに、館内には写真スタジオも併設。結婚式や成人式の前撮りなど、スタイリングを終えたその場でプロのカメラマンが撮影し、記念に残る一枚を手にすることができる。
そんな様々な業務に共通するブライダルサロン寿の最大の強み。それは、トータルなコーディネートの提案力だ。
花嫁の美しさは、トータルなコーディネート力から生まれる
「今で言うところの『ブライダルアドバイザー』。近隣では、弊社がいち早く取り入れたスタイルです」
善大社長の言葉を受け、清子専務が当時からの想いを語る。
「衣装選びは、一貫した『テイスト』が大切です。衣装をまとわれるご本人様とドレスや小物、それぞれのテイストがぴったり合うことで、洗練されたスタイリングができあがります。また最近では、どこかの箇所のテイストを意図して変えることで新鮮さやトレンドが加味され、その結果、花嫁様がより華やかになられることもあります。花嫁様がイメージされる姿をお聞きしながら、こちらからも提案させていただき、一緒に作り上げるお手伝いをさせていただくという当時には珍しいシステムでしたが、それこそが皆さんに求められていることでした。
ブライダルシーンだけでなく成人式においても、振袖選びに始まり、ご本人様のイメージとお選びいただいた振袖に合うヘアスタイルやメイクアップ、着付けのご提案を行います。お写真の前撮りでは、専門の美容師が着付けを行い、館内に設置したスタジオでプロカメラマンが撮影。利便性も含め、すべて弊社の館内で一貫して提供することを、創業以来、徹底して続けているんです」
ライフスタイルの変化と共に、多様化を重ねるニーズに対応するべく、若手スタッフが中心となってお客様に向き合うのも、ブライダルサロン寿の強みの一つと語る清子専務。
「成人式を迎えられる方や新婦様と、年齢が近いスタッフが中心となって接客を行っていますので、スタッフからの提案にお客様が共感してくださいますし、お客様のご希望もスタッフが受け止めやすいという良さがあります。ますます多様化してゆくお客様の価値観にどうお応えできるか、お客様のニーズを受け止めながら新しいご提案を届けてゆきたく思っています」
日本文化を「革新」と「伝統」の両立で守りたい
ガーデンウエディング、レストランウエディング、ブライダル図書館®……。ブライダル市場のトレンドをいち早くつかみ、北播磨エリアのウエディングシーンを彩ってきたブライダルサロン寿。今また新たな取り組みを計画中だ。
「今までのように最初のご来店で、お客様のご希望をうかがいながらご試着いただき、衣装をお決めいただくのでは、店頭へお越しいただくまでのハードルも高く、店頭での所要時間もかかります。初めて立ち寄る店のホスピタリティや、衣装の値段、デザインに不安はつきもの。これからは、店内の景観や振袖選びの様子、お好きな衣装のお顔映りまで、ご自宅でじっくりと事前に体験いただくシステムを開発。『この店なら行ってみたい』と思っていただくための3D動画による配信サービスを始めようと思っています」
北播磨のウエディング市場のけん引役として、さらなる前進を続けようとしている。
そんな最先端のサービスに向かう一方で、善大社長と清子専務には、大切にし続けたいもう一つの想いがある。「お慶びの記念日になる幸せの文化の価値」を伝え続けることだ。
「私たちの仕事は、日本の文化を受け継いでいく仕事です」と善大社長は言葉に力を込める。
「婚礼衣装としての打掛は、江戸時代から続く伝統です。この近隣でも、あつらえた打掛を大切に保管されているご家庭があります。先日は、結婚式に曾祖母様の打掛を着たいとご相談にお越しになりました。打掛とのコーディネートによる特別オーダーで、小物もご用意させていただきました。打掛を通して、幸せも代々受け継がれてきたもの。私たちにとっても、関わらせていただけたことが幸せでした」と清子専務は話す。
「例えば成人式も、美しい振袖を着てお友だちと久しぶりに出会い、自分たちがワイワイと楽しむだけのイベントではなく、ご両親のおかげで今日の日があることへの感謝を伝える、日本の大切な儀式だと思います。ご家族に喜んでもらう機会を、私たちのような仕事に携わる者が提案させていただかなければならないと感じています。そうでなくては、日本の文化を守り残してゆけません」と語る善大社長。
清子専務も「写真撮影には祖父母様も同伴されることが多いので、ご家族みなさんでお食事を楽しんでいただきながら成人式をお祝いできる場を、弊社の館内に用意できたらと思っています」と、新たな提案を模索中だ。
何でもできる人ではなく、ひとつの強みを伸ばせる人に
新たな挑戦も、伝統文化の継承も、かなえるために必要なのは人材だ。中でもコミュニケーションは何より必要な力だと、善大社長も清子専務も声を揃える。
「この仕事は、お客様へのカウンセリングから始まります。お衣装合わせも、ヘアスタイルやメイクアップも、お客様の好みを引き出す会話をし、美容室と連携を取りながら提案します。どんなに美しい仕上がりでも、お客様お一人おひとりの希望を反映し、スタイリングの意味をしっかりとお伝えできなくては、お客様には十分に満足いただけません。『このスタッフになら任せたい』と、気持ちの面でもつながっていただけて初めて、本当に私たちの仕事に納得いただけるのです」
お客様と心でつながるためのコミュニケーション力をはじめ、安心と信頼を届けるためのホスピタリティ能力や接客マナーなど、求められるものの多いブライダルの仕事。清子専務は「入社していただくと、それらが身に着きます」と言う。
「どんな業種でも必要とされる力です。身に着けば一生の財産になります。だからといって、すべてに秀でることを求めているわけではありません。一人ひとりに個性や得意なことがあります。そこを伸ばせばいいのです。平均してできるより、何か一つ強いものを持った方が、仕事のうえでは自分の武器になります。」
「能力は一人ひとり異なります。その人にしかない強みを見つけ、育てることが弊社の役目だと思うのです。新しいことを追いかけ続けるばかりではなく、一つの物事を突き詰めるほうが、ビジネスには役立ちます」と善大社長。
「自分にしかない良さを見つけてもらい、好きな仕事に取り組めたら幸せです。その良さを見つけるパートナーが、私たちブライダルサロン寿であればいいなと思っています。」
経営者紹介
代表取締役 中田善大さん 取締役専務 中田清子さん
ふたりの結婚式から始まった、ブライダル業50年の歩み
善大社長:先代は、総合呉服と用品の卸問屋を営んでいました。実は私自身は商売があまり好きではなく、法律の道へ進むことも考えたのですが、最終的には家業を継承しました。今にして思えば、人とのお付き合いも好きですし社交的だとも言われますので、案外、合っていたのかもしれません。
清子専務:昭和41年に結婚しましたが、結婚式の衣装がどこにもなくて、あちこち探し歩いたんです。数軒あった衣装レンタル店では納得できるものに出会えず、オーダーで打掛をあつらえました。でももっと大変だったのが、お色直しのカクテルドレス探しでした。当時はお色直しも浸透していないうえ、レンタルシステムも整っていなかったため、オーダーするしかありませんでした。さらに髪飾りから手袋、シューズ、アクセサリーに至るまで、すべて自分で揃えなくてはならず、本当に大変だったんです。
善大社長:まだまだドレスが少ない時代でした。しかも、お色直しでカクテルドレスを着た結婚式は、全国でもあまり例がなかったと思います。私たちは神戸のホテルで式を挙げましたが、その当時はまだ、ほとんどが近所の神社や公民館などで行っていた時代でした。
清子専務:その結婚式をきっかけに、私が着ていたドレスや小物を貸して欲しいと声がかかるようになりました。ブライダル業界の不便さや不自由さを実感し、お客様にトータルコーディネートを提供できるブライダル衣装のレンタルシステムを作ったのが、仕事のスタートでした。
善大社長:その頃から結婚式で打掛を着る方や、お色直しでドレスを着たいという方が徐々に増えていきました。結婚式が、現在の形に変わっていく節目の時期だったのだと思います。それ以来、この道一筋に50年が経ちました。
世界のブライダルデザイナー、桂由美との運命の出会い
清子専務:ちょうど私たちが事業を始めたのと同じ頃、京都の婚礼衣装メーカーで、若手のホープとして世に出ていこうとされている桂由美先生に出会ったんです。地域に密着して多くの方にウエディングドレスを伝えたいという先生の想いをうかがい、先生のドレスを弊社で扱わせていただくことになりました。
善大社長:当時は、結婚式でドレスを着ること自体、まだまだ浸透していませんでした。桂由美先生もまだ無名のデザイナーだった時代です。私たちは先生との出会いをきかっけに、ブライダルドレスのレンタル専門店として成長し、桂先生はドレス専門店を地域で展開する足掛かりを手にされ、世界的なブライダルデザイナーへと駆けあがっていかれたんです。
清子専務:そんな先生のドレスをはじめ、弊社のオリジナルドレスなど、美しい衣装に囲まれながら人様にお喜びいただく仕事ですから、「いい仕事ですね」と言われます。その通りなのですが、お一人おひとりのお客様にとっては、一生に一度の晴れの日です。やり直しがききませんから、気を引き締めながら日々取り組ませていただいています。緊張する仕事ですから、結構大変です。
スタッフを育て続けた半世紀
清子専務:振り返ってみると、スタッフと向き合い続けてきた50年間です。一人ひとりが個性を伸ばし、充実感を感じながら、できる限り長くブライダルの仕事に携わって欲しいんです。弊社に長く勤めて欲しいという意味だけではなく、この業界に関わっていて欲しいと思っています。
善大社長:弊社のスタッフは、8割が女性です。結婚を機に環境が変わり、退職せざるを得ないケースも多々ありますから。
清子専務:新卒で入社する人もあれば、異業種から転職してくる人もいます。学校を卒業してすぐに入社してくる人たちは社会経験がありませんから、社員教育の前に社会人としての人間教育からスタートです。そんな人たちも、仕事を続ける中で自分の得意分野を見つけ、生き生きと輝いてくれるんです。
善大社長:社会人としてここで何かを見つけてもらうための、方向付けには心を砕きます。成功の秘訣はありません。どんなことでも自分との闘いですから、常に高みを目指す向上心を持つことが大切です。弊社を経て転職した先で活躍しているスタッフもいますし、みんな頑張ってくれています。
日本文化を守り受け継いでゆくために
清子専務:現在の弊社は、ホスピタリティの行き届いた接客を行っているという自負はありますが、そこにとどまっている気がしています。お客様が希望されることに、誠心誠意お応えするだけでなく、もう一歩奥まで深く入って提案を差し上げる必要があると思うのです。お客様は、希望される内容や演出を、ある程度自分の中で用意をされて店頭に来られ、相談されています。お一人おひとり環境もご予算も違いますから、衣装選びにとどまらず、それぞれのオリジナルな結婚式を提案させていただきたいですね。
善大社長:できる限り経費を抑え、ご家族の心に残る温かい結婚式や、振袖という衣装だけではなく、ご家族で成人をお祝いできる場を提案させていただきたいと思っているんです。お客様への気配りと繊細な心遣い、ご希望の一歩先をゆく商品やサービスの提供が、日本文化をより身近なものに近づけ、継承につながっていくと考えているのです。
従業員紹介
マネージャー 左神文華(さがみ あやか)さん
地元ならではの思い出と共に入社
加東市で生まれ、加東市で育ちました。小学生の時、神戸で行われた親戚の結婚式に参列。子ども心に、もっとオリジナリティのある演出があればいいのにと思ったことが、ブライダル業界に関心を抱くきっかけでした。小学校の卒業文集に、「ドレススタイリストになりたい」と書いたくらいです。
高校卒業後、大阪の専門学校へ進学。ドレスの知識や着付けに始まり、ヘアセット、メイクアップ、ネイルアートといった美容からビジネスマナーまで、ブライダルコーディネーターとしての基礎を学びました。
就職を考える時期を迎えると、大阪での暮らしを経験したからこそ、生まれ育った地元への愛着が湧き、加東市での就職を希望。その時思い出したのが、ブライダルサロン寿の存在でした。
実はまだ私が学生だった頃、ウエディングドレスを着る機会のなかった祖父母へ、家族から結婚式の写真を撮ってプレゼントしたんです。その時お世話になっていたのが、ブライダルサロン寿だったのです。
スタイリングからデスクワーク、トレンドの収集まで
弊社の業務は、成人式の振袖や婚礼衣装のトータルコーディネートです。お衣装選びだけでなく、ヘアセットやメイクアップ、アクセサリー選びに至るまで一貫してサポートをさせていただいています。お選びになるヒールの高さひとつでドレス姿の美しさが変わるため、よりお似合いになる衣装にお出会いいただくために、丁寧な説明を心がけています。
また、こうした現場だけでなく顧客管理や提携先との打ち合わせなど、パソコンに向き合う事務仕事にも取り組んでいます。デスクワークを意外に思われる方もいらっしゃいますが、お客様が不安な気持ちを抱かれないために、とても大切な業務なんです。
一方、世の中のトレンドに関する情報収集も必要です。現場での提案では、お客様が求められているものを把握することが一番重要になります。例えば、最近ではリモート結婚式のご希望が増えてきました。「何から準備すればいい?」「美容師の手配は?」「招待状ってどうするの?」と、お客様もご両親様もわからないことばかり。まずは最初のお電話の段階で不安を解消して差し上げることに始まり、ご来店の際にはきちんと提案ができるよう、日頃から準備をしておくなど、幅広い対応が求められる仕事です。
お客様と心がつながる喜びを、やりがいに!
「この衣装だと、どんなヘアスタイルがいいですか?」
接客の中で、お客様からこんなご相談をいただく時が一番うれしい瞬間です。お衣装に納得してくださり、私の提案を信頼してくださったからこそ、お顔まわりのご相談もいただけるのだと感じるからです。
また、お客様から温かいお言葉をいただく時にも、大きなやりがいを感じます。あるお客様は、衣装のフィッティングの際、「結婚式に来てください」と招待状をくださいました。私たちは、結婚式の準備をお手伝いすることが業務ですので、当日にお出会いすることはありません。お客様のお気持ちが、大変うれしい出来事でした。
他にも、挙式を終えられた後、わざわざご挨拶のために来店くださるお客様もいらっしゃいます。いずれもお客様と「心がつながった」と感じることができます。この仕事は、ご来店の日限りではなく、長ければ一年近いお付き合いになる業務です。お客様という立場は尊重しながら、お付き合いの距離は身内に近い感覚を大切に、コミュニケーションを重ねて信頼関係を築く努力をしています。
地元の強みを活かせるのは、地方の職場だから
地元で働くからこそ、自分の特性を発揮できると思っています。接客をしていると、よく出身地を尋ねられるんです。「加東市です」とお答えすると、「何年前の卒業?」「出身中学校はどこ?」と、一気に親近感を持っていただけます。
こうした経験からも、地元で就職をすることのメリットはいろいろ実感しています。「土地柄」という言葉がありますが、とても深みのあるものだと感じます。その地域ならではの特性や風習、土地勘をあらかじめ理解している地元こそ、働く上での自信や楽しみにつながるものだと感じるのです。
また地方であるほど、都会性を求めているお客様も多いもの。最先端のおしゃれや流行、海外の情報など、新しいものに触れたり、情報や知識を集めることが好きな人には、ぴったりの仕事だと思います。お料理が好きなら婚礼料理、趣味が多ければ引き出物やプチギフトの提案など、いろいろなものにつながりが生まれますので、いっそう仕事を楽しめるはずです。
このたびの自粛期間で、時代が一気に進んだ気がします。オンライン化によって私たちの業務内容も凝縮され、お客様にとっての良いサービスも大きく変わると思います。便利さだけではなく、加東市や北播磨という「地方」だからこそ取り入れられる、新しいサービスをご案内できないか。時代の流れに少しだけ先手を打てるアイデアを、一緒に見つけてくださる方と出会えることを期待しています。
文:内橋麻衣子/写真:高橋武男
令和2年度 加東市商工会企業紹介PR事業