有限会社フジイ研磨 / 町工場のイメージが変わる。加東市で人間とロボットが協働する未来へ

有限会社フジイ研磨 / 町工場のイメージが変わる。加東市で人間とロボットが協働する未来へ

有限会社フジイ研磨は、マシニング加工・NC旋盤加工の工場です。「不可能を可能にするために、失敗を恐れずに挑戦!!」という会社方針をモットーにどんな商品でも製造し、幅広い対応ができる企業です。

フジイ研磨の取材で驚いたのは最新ロボットを導入し、24時間フル稼働で製造していました。ロボット導入により、少人数で人間がラクに仕事ができるのを実現しています。今回は取締役専務の藤井章裕さんと従業員の西川さんにお話を伺いました。

目次

ロボットの24時間稼働で業務を自動化

ロボットの24時間稼働で業務を自動化
取締役専務 藤井章裕さん(以下、藤井さん)

━━御社ではどのような機械を導入されていますか?

(藤井さん)
弊社は基本的に森精機(DMG)の機械を導入しています。創業当時に紹介してくれた会社がDMGでした。森精機の設備自体は高いですが取り扱いやすく、プログラムの入力間違いや衝突事故を防げるので使用しています。

先日、ヒューマンエラーによる事故が起きましたが、復旧までが早いのがメリットです。同じ事故が起こったとしても、他の機械では復旧までにもっと時間がかかります。

━━YouTubeで森精機が御社の動画をアップしているのを拝見しましたが、加東市にもこのような会社があるのだと興味を惹かれる内容でした。

DMG MORI TVCM 「Front Runner Vol.65 有限会社フジイ研磨」

(藤井さん)
弊社は製造業のため、人材が不足しています。就職する上で『キツい・汚れる・危ない』という工場のイメージは変わりません。しかし、僕はできるだけラクをしたいと思っているため残業もしたくないし、しっかり休みたい、その辺を含めたときに自動化が鍵です。

たとえば、飲食店へ行ったときに配膳するロボットは『協働ロボット』と言われており、一緒に働けるロボットという意味です。協働ロボットが森精機から発売されることになり、レイアウトも変えなくていいし、メリットも多いので購入を決めました。

もともと、森精機さんは『残業の2時間をロボットにやらせましょう』というコンセプトでした。しかし、多額の費用をかけて残業で2〜3時間だけのために設備投資するのはもったいない。

設計段階で一度、森精機を見学しましたが、弊社にあるローダー機という機械とロボットがくっついた装置と同じ仕組みでした。「これなら24時間動くんじゃないか?」という感覚で1台導入しました。

ロボットの24時間稼働で業務を自動化

その後、自分なりに協働ロボットに対する理解を深めて、材料を乗せるテーブルは自作しました。たとえば、製品1個を作るの5分かかるとします。機械を10時間稼働しても、120個しか作れない。それなら、一度に50個乗るテーブルをまず作る。アームの長さに限界があるなら、2段・3段と積んだらいい。

もともと、機械を24時間動かすのが難しいという感覚がなかったから、自動化に対しては抵抗がありませんでした。ロボットが導入されるまでの間、刃物の破損具合や刃物の耐久性、切りくずの処理などの統計をすべて算出しました。その後、機械の24時間稼働に成功します。

YouTubeをキッカケにCMのオファーへ

YouTubeをキッカケにCMのオファーへ

━━藤井さん個人でYouTubeやインスタグラムで発信されているのを拝見しました。

(藤井さん)
SNSでは自分の趣味である車の発信をしています。YouTubeは登録者数が3000人ぐらいです。最近ではフジイ研磨に関するハッシュタグもつけています。最初は車のチャンネルで会社の内容を投稿するのはイメージが悪いと思っていましたが、これも一つの武器だと思い発信しています。

藤井さんのYouTubeチャンネル F.F.C_Channel

森精機さんが僕に目をつけてくれたのはYouTubeだったんですよ。妻が「ロボットのことを投稿したら?」と言ってくれたのがキッカケでした。その投稿を森精機のマーケティング部が見つけて、電話がかかってきました。

その後、取材の話もあったり、50人ぐらいの前でパネルディスカッションしてほしいといった話までたどり着きました。メーカーでのパネルディスカッションは『ロボットを育てれば人間はもっと楽になる』というプレゼンでした。

━━そう思うと発信は大切ですね。

(藤井さん)
そうですね。妻が会社紹介のホームページを作ってくれたおかげで、皆さんに認知してもらえました。恥ずかしいけど、それが始まりです。今では名刺にも、インスタグラムのURLをつけています。

その時期にフロントランナーというテレビCMとYouTubeの企画オファーをいただきました。また、DMG MORIのユーザー向けマガジン「Technology Excellence」にも掲載されており、このマガジンは全世界向けで海外の会社にも周知されています。

ただDMGのYouTubeを見ると、うちが一番町工場感はありますね。他は大企業ばかりなので、とっつきやすいと思います。

弊社は自動化で今、注目されています。一般的に自動化は大量生産のイメージがあると思います。しかし、森精機のMATRIS Light(マトリスライト)という機械は、変種変量に対応が可能です。変種変量とは、材料が同じで加工寸法が違うものを指しますが、製造工程でそのようなパターンは結構あります。

たとえば、人間が機械の段取りした後に帰宅。すると、Aという商品のプログラムを自動で実行したら、次はBという商品に切り替わります。Bが30個完成したら、Cを60個製作します。翌朝出社したら、終わっているというイメージです。

今はどこの会社も人材が不足しています。特に加東市は田舎なので都心に比べると、人口も少ないし、仕事を探している人も少ないです。路線バスも無くなったため、外国の方でも車やバイクがないと生活できません。

加東市で立派な会社は多いけど、そういう状況下で自動化しないとダメなのは分かっているけど、踏み出せない工場は多いでしょう。自動化できないから、将来どうするのかなと思います。自動化の必要性に気づいていない企業もまだまだいます。

━━ロボットを導入したときは、どんな点で苦労しましたか?

(藤井さん)
協働ロボットはぶつかると人間がケガしないように止まるので、少しの衝撃でも止まってしまうので難しい部分があります。もちろん、お金をかけてセンサーをつければ動きますが、コストを上げたら意味がない。

うまくいかなくて「何でだろう?」と気になって、寝てるときでも考えました。それで起きたとき、妻に思いついたことを全部言って、それを実行して動いたときは一番嬉しいですね。

3Dプリンターでオリジナル商品の製造

3Dプリンターでオリジナル商品の製造

(藤井さん)
弊社はまだ成長段階ですが、今後は自動化が当たり前になると思います。飲食店でも自動化は始まり、製造業でもいかに早くそこに手をつけるかが大事です。

━━やはり、時代の流れとして自動化しないと、なかなか厳しいですよね。

(藤井さん)
そうですね。スマホ一つで何でもできてしまう時代ですから、できるだけ自動化を目指します。理想的なのは時間を作って、自社製品を作ろうと計画しています。

弊社は現状、BtoB向けの事業ですが、今後はBtoCに目を向けて、3Dプリンターや3Dスキャナーを導入しました。製造業ですが、もっと違うジャンルに設備投資しています。

━━3Dプリンターでどのような商品を製作しているのですか?

(藤井さん)
3Dプリンターで製作しているのはロボットハンドです。ロボットにも重さの限界があって、弊社では5kgまでの物をつかめます。ただ、5kg可搬の場合、ロボットハンド自体の重さも含まれます。

鉄製だと重量が重くなるため、ロボットハンドの爪は軽くて強い樹脂を採用しています。

3Dプリンターのメリットは機械を止めなくていいし、失敗のリスクが少ない点です。また自分で設計して自分でプリントアウトするだけですから、人の手がかからないのも大きいですね。

━━今後、どのような人材を求めますか?

━━今後、どのような人材を求めますか?

(藤井さん)
興味とやる気のある人を求めます。逆にプログラミングができる人は別にいらない。僕もド素人から全部やっているから、苦手なこともあります。マシニングは得意だけど旋盤が苦手であったり、3Dは得意だけど2Dは苦手であったり、人によって見え方や発想が全然違うので問題はありません。

そのため、人材に求めるものは『やる気』だけです。モノづくりは本当に面白いし、全員がとにかく一生懸命なので、元気があってモノづくりが好きな人は歓迎します。

━━森精機さんの動画を試聴したら、「加東市にこんなすごい機械を導入している会社があるんだ」とモノづくりに惹かれる若者は多いと思います。

(藤井さん)
そうですね。僕は小野工業高校が母校ですが、教頭先生に繋いでもらって話をしました。小野工業にも森精機の機械が導入されているので、「ぜひカタログを置いてください」と言ったら、図書室・進路指導室・機械課の教室に設置していただきました。

藤井さんのInstagram DMG MORI ユーザー向けマガジンについての投稿

今から就職する人に対して、一企業として目に留めてほしいという思いがあります。

ロボットがきっかけで仕事をいただいてる企業もあります。共通の趣味で仲が良い社長さんとは、ロボットにチャレンジするから手を貸してくれと言われたりもします。

━━藤井さんは企業のロボットアドバイザーとしてもポジショニングを取れそうですね。

(藤井さん)
皆さん、自動化に対して難しく考えすぎなんですよね。以前、ある企業でプレゼンしたときに「一品ものだと1個しか製作できないから、自動化する意味はあるんですか?」という質問がありました。

僕の考え方でいくと、機械の段取りをするのに1日ぐらいかかります。商品を製作するのは翌日です。それだったら、CADCAM(キャドキャム)のレベルを上げた方がいい。

プログラムを作って、ロボットに作業させれば、2日で2個しかできなかったものが、1日で4個できます。人間ができることを8時間でやって、残りの16時間で物を作る方針でやっています。

メーカーさんには地域の企業が困っているのであれば、弊社と同じ設定にしてくれたら良いと言っています。あとは僕が現場に行ってアドバイスします。

自動化したらヒューマンエラーが減少し、取り付けのミスもないから、人を教育する手間が省けるんですよ。また、細かい作業手順書が必要なくなります。

2代目として経営している同業者や知り合いでも、跡継ぎ問題などもあって最終的に廃業している企業もいます。しかし、あと何年か耐えたら立場逆転はするんじゃないかと勝手に思っています。

うちは娘が2人なので、どっちかが興味持って跡継ぎしてくれれば良いかなと思います。そのためにはそれなりの会社にしておかないといけません。「パパの仕事はおもしろいぞ」と言えるようにします。とはいえ、製造業は難しい部分がありますね。

今はBtoB向けですが、最終的には自社製品の製造を検討しています。やはり、製造業を支えているのは僕らのような下請け企業です。そこを何とか繋ぎたいという思いがあります。基本的に何でも作れるから、作れないものはありません。

町工場のイメージを払拭したい

町工場のイメージを払拭したい

(藤井さん)
人間だけが出来ることは無くしていきたい。検品や段取りは静かで涼しい場所で出来るようになればよっぽど楽じゃありませんか。そんな風にシフトチェンジして行きたいですね。

こういう町工場のイメージを変えたいです。キツイ・きたないのイメージを払拭して、もっと楽に働けるようになりたい。僕も勤めていた時代があるから、しんどいのも理解できるし、早く帰りたい気持ちも分かります。

去年はかなり取引先を選別しました。やはり、支配されている状況から脱却したい思いがあります。

溶接ロボットは一世代前ぐらいからはやっていますが、完璧に使えている会社は少ないイメージです。しかし、そうはならないように何でもロボットにさせて極力、人の手がかからないようにしたいですね。そのためにはスタッフのレベルも上げる必要があります。正に名前の通り、人間とロボットとの協働ですよ。

SNSを見ると海外では、もっとロボットで遊んでいます。たとえば、弊社の機械は加工が終わると扉が自動で閉まります。

しかし、そんなことを想定していない機械もあるから、扉を手動で開けないと機械があります。普通は自動化できないと思ってしまう。それをロボットが扉を開けたり、スイッチをオンにて、エアシリンダーをつけて、モノを取りに行って、加工機をスタートという流れを全部行っているのを見て、ロボットで何でもできると思いましたよ。

今日、インタビューする従業員はもともと僕の友人です。本当に賭けでしたが、たまたま前職を辞めるタイミングで声をかけました。他の採用試験を受けていましたが、試験までの期間はバイトに来てもらったんです。

まずはやってみて、面白いと思ってもらうのが大事だと思いました。本人も面白い仕事だと思ったらしく、「採用試験に落ちたらいいのに」と言ったら本当に落ちました(笑)

その後、すぐに連絡をくれたので採用しました。僕はルールを守りつつ、面白い職場にしたいですね。会社とプライベートを分けたいという話を聞きますが、逆にしんどいんじゃないかなと思います。イヤイヤ仕事に来るよりも、「こんな話があるんですよ」という感じで積極的に取り組む方が楽しいんじゃないかな。

工場長の負担を減らしてラクさせたい

工場長の負担を減らしてラクさせたい
従業員 西川さん(以下、西川さん)

続いて、従業員の西川さんにお話を伺いました。専務の藤井さんとは友人同士で、二人の間柄や仕事を通じて楽しくコミュニケーションを取っている姿が印象的でした。

━━入社のきっかけを教えてください

(西川さん)
以前は溶接工をしていましたが、職場を退職するのが決まっていました。そこで、藤井さんから熱烈なアプローチを受けました。

他の採用試験を受けていましたが、その試験には落ちました。合否判定の用紙を見て、5分以内で藤井さんに連絡して「落ちたのでよろしくお願いします」と言って入社しました(笑)

━━業務内容を教えてください

(西川さん)
旋盤やNC旋盤などの機械加工をメインに仕事をしています。

━━業務でどのような時に難しさを感じますか?

(西川さん)
上下の寸法公差を入れる必要があるのですが、それが難しいというか気を使います。

━━寸法公差というのは、どのような意味ですか?

(西川さん)
たとえば、穴開け加工をした商品の内径が、±0.01〜0.05に収まらないと、不良品になってしまう。その公差に収まるよう機械を調整するのが難しい。

━━職場の環境を教えてください

━━職場の環境を教えてください

(西川さん)
雰囲気はアットホームな感じです。仕事が終わると、藤井さんと二人で話し込んでしまうため、経営者と従業員の関係から友達に戻ってしまいます。ただ入社するのは勇気が必要でした。友人関係が崩れるんじゃないかと心配でしたが、結果的に上手くいっています。

━━他の皆さんとはどうですか?

(西川さん)
他の人とも仲良くしています。

(藤井さん)
全員、話し出すと長いですね。

(西川さん)
僕が一番、話すと長いので「早く帰れ」と言われているのに、なかなか帰らない社員です(笑)

━━仕事でどんな時にやりがいを感じますか?

━━仕事でどんな時にやりがいを感じますか?

(西川さん)
機械加工のスクールに行ったのですが、それからスキルは一瞬で上がりました。

(藤井さん)
しかし、誰もがスキルアップできるわけではないからね。

(西川さん)
2日目ぐらいで難しいと思いましたが、会社からお金を出してもらったため、無駄にならないように必死でした。

(藤井さん)
初心者が行くような内容ではないからね。

━━それまでに機械加工の経験はなかったのですか?

(西川さん)
経験はゼロですが、3カ月で詰め込んで学びました。藤井さんに渡された教材を必死に勉強したのですが全然、役に立たなくて焦りました。

旋盤の勉強に行ったのですが、マシニング用の教材を貰っていたため、先生からは「この教材は全然関係ないから忘れて」と言われました(笑)

(藤井さん)
しかし、なかなか普通では出来ないことをやっているからすごいよ。

(西川さん)
結構、がんばって覚えました!モノづくりは面白いから、自分に向いてるなと思います。ただ、スクールは行くだけ無駄になる人も結構多いかもしれません。素人には難しい内容だと思いました。

(藤井さん)
スクールの内容を見ると、普通では無理と思いました。よくやったなという思いと、たった3カ月で覚えたのは値打ちがありますよ。

(西川さん)
僕は運が良くて、当初は3人の受講生が来る予定でしたが、キャンセルが2人出たので先生にマンツーマンで教えてもらえました。

━━今後の目標を教えてください

━━今後の目標を教えてください

(西川さん)
今は工場長に仕事が偏っているため、全ての仕事を一人で抱えています。もう一人が同じ仕事もできたら、それだけで仕事は分散できると思います。工場長が違う作業もできるように時間を作るのが目標です。

入社後すぐに仕事のバランスが偏っていると思いました。他の人が出来なかったり、トラブルを防ぐために一極集中していましたが、そういうのを分散した方がいいかなと思います。将来の目標は、工場長を越えることです。

━━高い目標を掲げて素晴らしいですね。

(西川さん)
工場長は、よく藤井さんの思考回路についていっていると思います。藤井さんは僕が今まで出会った人のなかで一番の天才です。藤井さんの才能を形にできるように頑張りたいですね。

━━これから新しく入社する方に向けてメッセージをお願いします

━━これから新しく入社する方に向けてメッセージをお願いします

(西川さん)
アットホームな職場で製造過程を理解すると、モノづくりの面白さを実感できます。最初にモノが出来たときは、「自分でこんなことができるんや!」と嬉しい気持ちになりました。

会社名有限会社フジイ研磨
所在地〒673-1414 兵庫県加東市上久米109
事業内容製造業
HPhttps://fujiikenma.moo.jp/index.html
TEL0795-44-1052
SNShttps://www.instagram.com/f_aim.official/

※本記事に記載されている個人的な内容については、ご本人様の同意を得たうえで掲載しております。

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この記事を書いた人

杉山 将平のアバター 杉山 将平 ライター

Webエンジニア / ライター
30社以上のWebサイトを制作 / アマゾンでKindle出版→カテゴリー部門で2冠達成 / セミナー講師 / レンタルスペース運営 / ホームページの定額サービス開始

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