株式会社ゴーセン / 1本の糸から世界へ。スポーツと暮らしを支えるものづくりの現場

株式会社ゴーセンは、テニスやバドミントンのガット、フィッシングライン、自動車部品用の繊維など、私たちの生活に身近な製品を数多く製造している企業です。

「1本の糸から、豊かな暮らしを創造する」をコンセプトに、加東市の工場を拠点として世界中に製品を届けています。今回は天神工場長の塩見和宏さんと、従業員の中島優紀さんにお話を伺いました。

目次

3つの柱で支える、糸づくりの世界

天神工場長 塩見和宏さん(以下、塩見さん)

━━まず、会社の事業内容について教えてください

(塩見さん)
事業の柱は大きく3つあります。1つ目がラケットスポーツ関係で、テニス、ソフトテニス、バドミントンのガットを製造しています。2つ目がフィッシングライン、いわゆる釣り糸です。そして3つ目が自動車や家電などに使用される産業資材分野です。

たとえば、車のシートや、エアバッグの縫製糸、EVに入っているコンプレッサーに使われる紐などを製造しています。コンプレッサーに限らず、洗濯機や冷蔵庫、エアコンなど白物家電にもモーターが使われていますよね。モーターは針金のようなものが巻かれていて、そのままスイッチを入れるとガシャガシャと音がするんです。

それを防ぐために、振動を抑え、音を出さないように糸で縛り上げる。そういった繊維製品も作っています。

━━かなり幅広い製品を手がけているのですね

(塩見さん)
はい、私は元々営業出身ですが産業資材部門を担当していたので、本当にいろいろなものを取り扱ってきました。

━━こちらの工場の規模を教えてください

(塩見さん)
現在、120名ほどの従業員が働いています。基本的にはこの加東市の工場がメインで、他に子会社として石川県の白山市に糸を染色する工場があります。また、タイにも拠点があります。

数値では表せない「感覚」の世界

作業中の中島さん

━━製造で難しい部分を教えてください

(塩見さん)
たとえば、ガット。強度や伸度などのデータが同じ製品が2つあったとしても、実際に打った時の感触がまったく異なります「カキーン」という打球感と「ボコッ」という打球感では、気持ちよさが違うため、よくお客様から指摘されました。

従業員、中島優紀さん(以下、中島さん)
ラケットスポーツ用のガットは試作と検証を何度も繰り返して製品化されます。データ上では同じ強度でも、実際に打ってみると打球感が全く違う。最終判断は、数値ではなく「感覚」になります。

━━試作と検証の繰り返しなんですね

(中島さん)
はい、感覚的なところは数字とは関係ないため、難しい部分です。

(塩見さん)
繊維は“生き物”のようなもので、湿度や温度、空気中の水分でも伸び縮みします。この“誤差”をいかに一定に保つかが、糸づくりの面白さでもあり、難しさでもあります。

(中島さん)
空気中の水分を吸収してしまって、それで伸び率が変わってしまう場合もあります。本当に生き物を相手にしているような感覚で取り組まないといけません。

━━工場内で温度や湿度の管理はされているのですか?

(中島さん)
影響する加工とそうでない加工があるため、影響するところには湿度管理や温度管理をしています。温度が低すぎても高すぎてもダメな工程があるため、そういった加工は対策しています。

━━生産性向上で取り組んでいることを教えてください

(塩見さん)
工程によっては30日以上かかるものもあり、単純な効率化が難しい仕事です。とくに細い糸の加工は、高速で回転する設備の中で微妙な変化を感知する繊細な作業になります。冬場は静電気で糸が切れやすくなるため、環境管理も重要です。

(中島さん)
糸が細ければ細いほど、加工時間が長くなります。細い糸は作業する人にとっても扱いづらく、全然見えないようなものもあります。しかも高速で回転させたりするので危険な作業でもあるし、取り扱いが難しいのです。

━━冬場は大変そうですね

(中島さん)
はい、これからの時期は乾燥して静電気が発生するので、それで糸が切れてしまうこともあります。

(塩見さん)
でも、それが面白いんですよね。誰でもできる仕事じゃないからこそ、日本で作る意味があると感じています。

━━設備について教えてください

(中島さん)
設備は専用機のような形で設備メーカーに特注で作ってもらいます。汎用機でどんなものにも使えるというわけではなく、「ここでしか使えません」という機械の方が多いですね。

━━マネジメント面で大変な部分を教えてください

(塩見さん)
この業界に限らず、日本全体の問題だと思いますが、「工場で働く」ということに対する魅力が低く見られている面があります。元々ものづくりの国として経済成長してきたのに、工場での仕事の応募が少ないのが現状です。

━━人材確保が課題ですね

(塩見さん)
はい、そうなってくると、どんどん自動化の方に進んでいきます。外国人技能実習生を雇って、誰でも簡単にスイッチを押したら同じ製品ができる。でも、それだと日本の良さがなくなってしまうんじゃないかと思います。

工場は24時間体制のところもあるし、夜勤もあります。そういった勤務形態を考えると、なかなか応募が集まりにくいのが現実です。

以前、私はタイに5年間いましたが、向こうでは12時間の2交代制でした。しかも4時間の残業がないと「辞める」という人ばかり。残業があって当たり前という感覚でした。

12時間×2交代で考えられるというのは、マネジメント的にはすごく楽です。しかし、日本ではそうはいかないのが大きな違いですね。

「自動化で夜も無人で回せないか」というのが課題ですが、自動化できるものとできないものがハッキリ分かれます。

(中島さん)
一昔前は本当に職人のような、その人にしかできない作業がありました。それを少しずつ技術継承して、今ではある程度いろんな人ができるようになっています。

ただ、自動化できない部分もあります。たとえば機械では判別できない糸の状態を、人の手の肌感覚で感知するような作業は、どうしても人でないとできません。

糸は一見綺麗な円柱に見えますが、実際にはデコボコがあり、太さも均一ではありません。このような繊細な素材を機械で正確に扱うことは、とても難しいです。

(塩見さん)
だからこそ、管理職や研究職の人はどんどん上を目指していけます。でも単純作業だけをしていたいという人もいる。そこが明確になってきていますね。

熟練職人は必要不可欠ですが、そんな人ばっかりだと困る。その人が休んだら仕事が回らなくため、スキルの分散化が必要です。

楽しく働ける職場を目指して

━━職場の雰囲気はどんな感じですか?

(塩見さん)
かつては“工場で働く”ことのイメージが低い時代もありましたが、今のゴーセンは明るく、意見を言い合える職場です

(中島さん)
工場のトップの人が違うと、やっぱり雰囲気も変わってきます。最近はだいぶ明るくなりました。すごく楽しくやらせてもらっています。

私が入社した頃は上司に話しかける雰囲気もありませんでしたが、今はまったく違いますね。工場長は意見を聞いてくれるし、コーヒーを奢ってくれます(笑)

そんな距離の近さが魅力です。

━━塩見さんが工場長になられたのはいつですか?

(塩見さん)
2020年なので5年になります。営業で入社して、その後タイに会社を作ることになり、「作っといて」と言われて行きました。営業拠点を作って、そこから工場を作りました。

帰ってきてからは今度は「上海に行け」と言われて上海へ。そして帰国後、社長から「本丸に行ってきて」と言われて、この工場の工場長になりました。

(中島さん)
塩見さんが来られてから、職場の雰囲気はだいぶ変わりました。

(塩見さん)
私は将来世代に対して、同じ苦労をさせたくありません。先輩たちが見えないところでいい加減なことをやってきた部分を、今の50代の世代が解決しています。それと同じことを彼らにはさせたくない。あと、彼らに悪口を言われたくないんですよ(笑)

「くそ塩見」とか言われるのは絶対嫌なので、きっちりしておきたいですね。

━━従業員の年齢層について教えてください

(塩見さん)
バブルが終わった後に入社した50代が多いですね。40代は少なくて、30代でまた盛り返しています。

━━30代の従業員が多いのですね

(塩見さん)
中島は30代ですが、彼のように課長になる人は多いです。

━━若いうちから責任ある仕事を任されるのですね

(塩見さん)
年齢は全然関係ないと思っています。それが会社の方針で、仕事ができる人はどんどん階級が上がるため、やる気がある人にとってはいい環境だと思います。

求める人材は「やる気と自分の意見を持つ人」

━━どのような人材を求めていますか?

(塩見さん)
求める人材像はシンプルで、「やる気がある人」「自分の意見を持てる人」です

たとえば、「仕事が面倒だから楽にしたい」という理由でも構いません。大切なのは、自分の意志で考え、行動できること。

「これはめんどくさいから省きませんか」と提案して、どうしたら省けるかを考える。そこから次の課題が出てくるわけです。一人で考えるんじゃなくて、みんなで考えるというのが大事だと思っています。ふにゃふにゃした会議ではなく、“自分の意見で会社を動かす”人を求めています。

人間っていろんなタイプがいますから、その中でどれだけ声を発してくれるかが大事だと思います。

感覚を武器に。現場を支える若きリーダー

━━出身はどちらですか?

(中島さん)
加東市出身で高校卒業後に入社しました。

━━ゴーセンを選んだ理由は?

(中島さん)
一番は家から近かったことですね。地元で働きたいという思いがありました。いくつか企業を受けましたが、ゴーセンは面接を通じて会社の雰囲気が良さそうだと感じて、ここに決めました。

━━どのような業務を担当されていますか?

(中島さん)
産業資材と言われる、車の部品関係やカーシートなどの分野を主に担当しています。

━━技術習得で苦労したことは?

(中島さん)
今の仕事に移る前は、ずっとラケットスポーツ部門の作業をやっていました。そこでの技術習得が難しかったです。

後で工場を見てもらったら分かると思いますが、回っている糸が切れているか切れていないかを、機械を止めずに判断しないといけない工程があります。本当に手の感覚だけで糸の良し悪しを判断しないといけません。

そこを感覚だけで分かるようになるのは、一番時間がかかりました。

━━感覚だけで判断するのですか?

(中島さん)
はい、しかも糸が流れている最中なので。糸を乾燥させたりもするので、最初は触ったら「熱っ!」という感じでした。でもみんな普通に平気な顔して触っていたので、慣れでしょうね。

━━仕事でやりがいを感じる時は?

(中島さん)
今はいろんな権限をいただいていて、自分で新しいものを導入できる立場にあります。たとえば自動化を自分が主導でやって実現できた時に、一番やりがいを感じますね。

それによって周りの人たちが少し楽になったり、会社の利益(収益)が上がったりするのを実際に見られる時が、一番やりがいを感じる瞬間です。

━━今後の目標を教えてください

(中島さん)
どんな年代の人でも働けるような補助的な設備を導入していきたいです。

50代の方が多いので、重量物を扱うと腰痛や労災のリスクがあります。たとえば、重たいものを持つ際のサポートアイテムなど、いろんな人が働ける環境を作っていけたらと思っています。

━━これから入社する方へメッセージをお願いします

(中島さん)
みんないろんな考え方を持っていて、楽しいこともあれば嫌なこともあると思います。でも、社会に出ると嫌なことの方が圧倒的に多いんですよ。

だからこそ、それを諦めずに、楽しいことを自分でこの会社の中で見つけていってほしい。ゴーセンだけじゃなく、どんな働く環境でも楽しいことを見つけて長く働いてもらえたら一番いいのかなと思います。それがゴーセンであれば私たちにとって、これほど嬉しいことはありません。

みんな、働きたくて働いている人って本当に一部だと思います。その中で、この会社で仕事の喜びを見つけてもらえたらと思います。


塩見さん、中島さん、広報部の松本さんと正面入口にて

今回のインタビューを通じて、株式会社ゴーセンの魅力が見えてきました。それは単なる製造技術の高さだけではなく、「人」を大切にする企業文化にあります。

数値では表せない感覚、静電気で切れてしまう繊細さ。そんな「難しさ」があるからこそ、日本でものづくりを続ける意義があるのです。

ゴーセンが求めるのは、「やる気」と「自分の意見」を持った人。完璧である必要はありません。「仕事がめんどくさいからこれを省きたい」という理由でもいい。大切なのは、自分がどうしたいかを持っていることです。

1本の糸から、豊かな暮らしを創造する。加東市から世界へ。見えないところで品質を追求し、感覚を研ぎ澄ませながら糸に向き合う。そんなものづくりの現場で、あなたも一緒に働いてみませんか。

会社情報

会社名株式会社ゴーセン
所在地兵庫県加東市天神220
事業内容ラケットスポーツ用品、フィッシングライン、産業資材の製造
HPhttps://www.gosen.jp/
TEL0795-47-1225

※本記事に記載されている個人的な内容については、ご本人様の同意を得たうえで掲載しております。

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この記事を書いた人

杉山 将平のアバター 杉山 将平 ライター

Webエンジニア / ライター
30社以上のWebサイトを制作 / アマゾンでKindle出版→カテゴリー部門で2冠達成 / セミナー講師 / レンタルスペース運営 / ホームページの定額サービス開始

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