有限会社オーエス電機工業所は1964年に創業以来、製造請負サービスのアウトソーシング業を行っている企業です。大手国内メーカー製品をはじめ、さまざまなユニット組立・検品業務に携わってきました。
顧客に代わって自社工場でスタッフが製品の組み立てや目視検査など製造工程に関わる仕事をしている企業です。
創業当時は電機メーカーの関連会社で、ブラウン管テレビの部品製造を請け負っていました。当時は高度経済成長期で作れば売れる時代。ノートパソコンの部品組立などを受託しますが、時代とともに市場は中国に流れます。
その後は企業努力で、時代のニーズに合ったものを生産してきました。近年では取引先を増やして、製造範囲も大幅に拡大。遊休地を活用して第三工場を稼働するなど、加東市の地域活性化にも貢献しています。今回は次期後継者で経営企画・推進部の下山宜昭さんにお話を伺いました。
━━製造範囲は広いですが、どのような商品でも対応が可能ですか?
(下山さん)
基本的には、業務引継ぎなどの移行期間を設けるため、業種・業界問わずさまざまな対応が可能です。現在の取引実績だと、貨幣処理機、通信端末、娯楽製品、農業用機器のユニット組立、車載関連製品の加工~検品、釣り糸の加工~梱包、など多岐に渡ります。
またスポットですが、ホテルのアメニティグッズの梱包作業なども行っています。最近では、市内にある就労継続支援B型事業所様と業務連携し、障害をお持ちの方に対して、就労を支援するための作業をわずかですが弊社から提供しています。
そうすることで、施設責任者様が営業的な仕事に時間を割かれず、本来の就労支援に専念できる状態ができれば、双方にとってメリットがあると思い、このような取り組みが新たに始まりました。
お客様が弊社を選んでいただくメリットは大きく3つです。1つ目は採用や教育、労務管理を弊社に丸投げできる点です。お客様は「人材が不足してやりたいことができない」「新規案件が回せない」といった悩みを抱えています。
たとえば、生産計画時のスタッフは3人だけど、半年後には5~6人ぐらい必要になる。その際の求人・面接・教育はすべて弊社が行うため、お客様の手間が省けて楽です。
2つ目は場所。すぐに工場を建築できないし、製造業は在庫を抱えます。そのために数千万の投資ができるかという経営判断はすぐにはできません。そこで、弊社の工場を活用していただきます。
3つ目はコストの削減です。中間管理職の労務管理が増えると、残業が発生します。労務管理を外注化することで、本来固定費としてかさむ部分を変動費化することができます。そういった面を含めて、丸ごと外注できれば、お客様の負担は減ります。
お客様にヒアリングしたところ、製造業ではどうしても派遣社員に頼らざるを得ません。しかし、派遣社員が離職する度に『教えては、辞めて・・・の繰り返し』になっていました。しかも教育の都度、リーダー職の残業が増えるし、なおかつ品質も安定しません。
ですから、一度採用したスタッフはどのような雇用形態でも、定着して戦力にしないといけません。そういった背景もあって、取引先も順調に増えています。
━━会社や事業に対する想いについて聞かせてください
(下山さん)
私が入社する前は2社ある取引のうち、1社の取引が売上9割以上を占める依存経営でした。依存経営が悪いわけでは無いですが、外部環境を見たとき、会社の成長性や安全性を考えると「今の利益はずっと続くの?」という危機感がありました。
そんなとき、2018年に取引先の母体が事業の分社化を行います。それを機に、新規開拓を率先していく第二製造部ができ、私が責任者として運営を担っていくことになりました。
それ以降、第一製造部は既存事業をメインに、第二製造部は新規案件をメインに事業運営をする事業部制を導入します。当時、第二製造部は社員は私と妻を含めて4名、派遣1名、パート8名の合計13名でスタートしました。
その後、新型コロナウイルスの影響などもありましたが、様々なご縁をいただき、他事業への展開を増やしてきました。そのおかげで最初は10人規模でしたが、今では30名超の組織になり、2022年の9月に経営課題であった脱一社依存も達成することができました。
ただ、良いことばかりではありません。組織が大きくなるにつれ、みんな一生懸命頑張っているのですが、一生懸命の頑張り方が人によって異なり、経営効率が悪くなります。そして、利益も徐々に減ってくるのです。私が目指す会社づくりを実現するために、みんなの頑張るベクトルを合わせて、目的を達成できる組織づくりが必要だと徐々に感じるようになりました。
社員一丸となって会社を良くする
(下山さん)
選択肢を増やすため、取引先を増やしてリスクを分散しました。しかし、特定の作業しかできないパートさんもいらっしゃいました。リーダーも丁寧に教えますが、なかなか作業が進まず、残念ながら退職された方もいらっしゃいます。悲しく、つらい出来事もありました。
ですから、どのような雇用形態であったとしても、従業員にはスキルや知識を身につけてもらい、与えられた選択肢を活かす必要があると痛感します。利益をしっかり出さないと、ジリ貧の会社では教育に投資できません。
社員と一緒に会社を良くするため、ひょうご人材活性化支援センターにご協力いただき、外部専門家を登用することで事業の課題を見つけ出す「課題抽出ワークショップ」を開催しました。
その中で、たとえば、「時間単位で休みたい」という要望があったため、時間有給制度を導入したり、固定電話を皆が取りやすい位置においたり、あとは作業中のハンドリフトの上下する際の音がうるさく、周囲に気を使って作業していたことが分かり、新しいものを購入したりしました。比較的導入しやすいことは、このワークショップを踏まえて導入しました。そうでないと、「発言したけど、何も変わらないじゃん!」って白けてしまいますよね(笑)。
2022年度には初めての新卒社員を雇用し、一泊二日の新入社員研修や資格取得のため費用補助も新たに導入しました。また、外部講師を招いて勉強会も実施しました。製造業なので生産効率を上げるため、「ムダ」についての理論から教えてもらい、なぜムダ取りプロジェクトをやるのか?という目的意識の醸造に大きく寄与したと振り返っています。
たとえば、ホワイトボードに見える化ボードを作ったり、タイムカード横には行事予定が見れる様にし、全員で共有できるようにしました。新設した広報部では、SNS養成講座を取り入れ、発信の仕方を学んでいます。その他には、未来の組織づくりのために、既存社員に対して、チームビルディング研修を行ったりしています。
また『自分ごと化』するため、完成後の商品がどのようになるか掲示板に貼りました。自分たちが携わった製品が、社会でどのような使われ方をするか知ることで、家族にも誇れます。可能な範囲でですが、お客様に依頼して、後工程を見学させてもらうなどして、私たちの仕事が社会にどう貢献しているか?を知ることで仕事にやりがいに繋がったりします。このボードは社員が私の想いも汲み取り、積極的に取り組んでくれました。嬉しかったです。
今の課題は、少し大袈裟かもしれませんが、私がもし急に倒れた場合、新規営業や全体管理を担う社員がいません。外部環境を見たとき、会社の成長余地はまだまだあるため、もっとお客様に頼っていただくには、組織を更に強化する必要があると思っています。そのため、全員で支える、頼られる会社づくりを目指しています。
従業員が少ないときは、指示命令系統は、私がすべて行っていましたが、今は従業員も増えたので役割を定義しました。チームリーダーには品質管理や生産管理、会議ならば進行役や議事録などの役割を決めています。今はそのようなルールを決めて行っている最中です。元々は会議など1つもなかった会社なので、すごく変わったと思います。
━━ライフステージに合った働き方とは?
(下山さん)
弊社の従業員は女性が多く、子供の状況や親の介護などによってライフスタイルが大きく変化するため、ライフステージに合った働き方を従業員が選択できる企業づくりを目指しています。それに、昔は一社依存だったので、「選択肢」が無かったんですね。そういう背景もあって、取引先を増やして、様々な選択肢を増やすことで、従業員が主体的に自分の働き方を選び、自分のやりたいことを実現できる、自己研鑽ができる環境を整備したいと考えています。
また、今後は企業主導型の保育施設や放課後デイサービスなどの導入も検討中です。あとは廃校予定の小学校などの遊休施設を活用し、地域活性化ができないかと色々考えています。
そして、『家事・育児・介護で働きたくても働く場所がない』という課題を解消できる会社を目指しています。
━━女性従業員が多い理由はありますか?
(下山さん)
細かい作業が多く、融通が利きやすいためか、子育て世代の女性の応募が多いです。求職者にとっての魅力の1つは、働きやすい環境だと思います。年休が120日以上、会社推奨有給日(5日間)を含めると、125日以上の年間休日があります。
厚生労働省の令和4年度の統計調査によると、企業規模「30~99人」の年間休日が105.3日のため、年間でみると約1ヶ月休日が多いことになりますね(笑)。だからと言って、決して楽をしようと思っているのではなく、生産性や業務効率には拘っているつもりです。メリハリは大事ですよね。
私は入社して9年になりますが、延べ200名以上の人生に触れてきました。ひとり親のご家庭や、介護を理由に決まった時間での勤務が難しいなど事情は様々です。そのため、働きやすい環境をまずは作ろうと決意しました。
ライフステージによって、働き方は変わります。今まで一社依存の時は提供できていませんでしたが、取引先が増え、会社から従業員に対して提示できる選択肢が増えたことで、もちろん、自分の希望とは異なる現場に配属になることもあるかもしれませんが、自分で選んで納得して働いてほしいです。
もし「ガツガツ働いてもっと成長したい!』という人がいれば、私の仕事も任せたいと思っています。そのためにも、様々な仕組みを導入することで、少しずついい会社にして、地域社会にとって、無くてはならない会社にしたいと考えています。
━━LINE WORKSを導入した経緯を教えてください
(下山さん)
LINE WORKS(※)を導入した理由は、A子さんというパートさんの欠勤がきっかけでした。長いときには2週間くらい欠勤していました。その度、電話がかかってきて私が彼女の代わりに作業をしていました。2019年当時は、脱依存が喫緊の経営課題だったので、「雇用の安定化のために新規案件をとっているのに、何で私が作業をやっているんだ!」とすごくイライラしていたのを記憶しています。
そんな中、A子さんと話をする機会がありました。話しを聞くと、ご家庭の事情で安定した出勤が難しい状況でした。A子さんは「仕事に関係がないプライベートなことを話すことで、会社に迷惑をかけないか?と悩んでいました。だから、いままで言えずにスイマセンでした。」と言われました。
それを聞いた瞬間、「ごめんなさい!」と頭を下げたのを覚えています。A子さんの欠勤理由が多いことを聞きもせず、ただただ、目の前のことに追われる日々だったので、イライラしながら作業していた自分が恥ずかしくなりました。
また、従業員が話しやすい環境を作ろうとも思いました。A子さんとの会話で「会社に言ったら迷惑かな?」という一言がきっかけです。
それから、私はプライベートな内容も社内でオープンに話すように心掛けました。A子さんとの会話の件もあり、少しでも相談しやすい風土がつくれるのじゃないのかなと考え、リーダーである私が率先垂範で、ありのままを伝えるようにしています。
ただ、それは従業員に強制することではないですし、プライベートのことなので、個人の裁量によります。でも、言いづらいことを相談し、助け合える環境整備は、心理的安全性を担保する意味でも大切にしたいと考えています。
その他にもLINE WORKSを導入して良かったのは、電話での伝え忘れが無くなり、チャットのメッセージに残っている点です。またグループチャットを作成しているので、欠勤対応がスピーディーにできるようになりました。
あとは仕事とプライベートの連絡先を分けたい方のためにも、LINE WORKSを導入してよかったです。その他にも、お知らせやアンケート機能、掲示板でブログも見られるようになっていたり、欠勤や予定業務を入れてもらっています。
※「LINE WORKS(ラインワークス)」とは、情報や予定を共有しあって活動する、組織・チームのためのコミュニケーションツールアプリ
━━どの様な人材を求めていますか?
(下山さん)
まずは今いるメンバーがもっと弊社で頑張ろう!と感じて貰える仕組み作りが最優先だと考えています。その次に採用と考えると、積極的に新しいことにチャレンジできる人材を求めています。
これからも、さまざまなチャレンジをしようと思っています。ただ、私もそうですが、ほとんどの人は大きな挑戦には不安を感じますよね。でも、現状維持では企業は生き残っていけません。過去の歴史が物語っています。だから、急な変化に巻き込まれるのではなく、時代に抗うのではなく、みんなと一緒に小さな変化を自ら起こし、それを仲間と一緒に乗り越えていけるチームを作りたいと思いますね。
周りと比べるのではなく『昨日のできた自分を褒める』
第二製造部の伊藤あきほさんにお話を伺いました。新卒で採用された伊藤さんの率直な思いや前向きな姿勢について語られています。
━━業務内容を教えてください
(伊藤さん)
広報と自動車部品の目視検査をしています。
━━新卒で採用されましたか?
(伊藤さん)
はい、そうです。もともとは加東市で育ったので会社から家も近いです。大学も近くて、三田にある関西学院大学でした。
━━御社のブログは伊藤さんが書かれていますか?
(伊藤さん)
そうですね。ほとんど私が書いています。
━━どのようなきっかけで入社されたのですか?
(伊藤さん)
じつは大学4年生の時にアルバイトとして働いていました。当時は就活に悩んでいたんです。就活では建前で話すため、自分の本音をさらけ出せませんでした。
それがすごくしんどくて、少し就活をやめて「これからどうしようかな」と悩んでいる時にアルバイトを始めようと思って、オーエス電機工業所で働きだしたのがきっかけです。
私は大学でメディア情報という学科を専攻していました。大学では動画撮影をして先生や生徒の前で公表したり、メディアを活用して何かを伝えたり、発信について学んでいました。
そんなとき、下山さんが自社をアピールするために広報部を立ち上げようといていたので、「私が大学で学んだ内容を生かせるのではないか」と思いやってみました。
━━なるほど。大学でメディアについて学んでいたから、記事を書くのがうまいのですね。
(伊藤さん)
いいえ、じつは記事を書くのは初めてです。大学でレポートは書いていたのですが・・・。最初はコンサルの方に記事の構成や記事の書き方を教えてもらっていました。
━━記事以外にもSNS運用をされていますが、ターゲットは対企業向けですか?
(伊藤さん)
大きく分けて2つです。取引会社の拡大ともう一つが採用です。とくに今は採用に力を入れています。採用と言っても社員の採用かパートさんの採用があって、ブログでは採用に力を入れています。
━━職場の雰囲気を教えてください
(伊藤さん)
私は入社して、身内のようにフレンドリーに接してもらえたのがよかったです。私の年齢的に同世代の人が少なくて、お子さんがいらっしゃる方が多いので、お母さんのように接してもらっています。
━━この仕事をして嬉しかった経験はありますか?
(伊藤さん)
私は最初「検査が向いていないな」と思っていたんです。なぜなら、先輩方は作業が早くて正確で、自分は本当にできなかったからです。でも先輩からアドバイスをもらい、すごく丁寧に教えてもらったおかげで徐々に作業が早くなりました。
作業を繰り返すうちに以前までは『絶対無理だろう』と思ってた作業量もできるようになりました。そういう自分の成長を感じられて嬉しいです。
従業員の要望をスピーディーに取り入れる会社
━━御社のブログを拝見すると、従業員の意見が反映されやすい職場に感じました。たとえば「名札はあった方がいい」という意見に対して、すぐに導入されていますね。
(伊藤さん)
パートさんから私に言ってもらって、私から下山に伝えています。下山が「何かあったら言ってな」と言ってくださるので、だからこそ何でも聞くようにします。
(下山さん)
伊藤が他の女性社員と相談しながら、全部任せて名札を作りました。役割にもよりますが、私が意識しているのは、『言われたからやる』という指示待ち、作業マンにならないでほしいと思っています。
パートさんなら5時間、社員なら8時間という人生の貴重な時間をオーエス電機で過ごして頂いています。一日24時間しかない与えられた貴重な時間の中で、『その時間をどう使うか』で人生の豊かさが決まってくると思っています。
だからこそ、少しでも楽しくするためには、自分たちが良いと思った点を積極的にあげようというスタンスです。私がいくら良くしようとしても、やはり一定の組織規模になるとボトムアップが必要と組織規模の拡大とともに痛感しています。
もちろんトップダウンで落とすのも必要だし、ボトムアップで意見を吸い上げるのも大切です。「何でも言いたいことを言う」というのは違いますが、風通しの良さを意識しています。
━━なるほど。導入までのスピード感があるなと思いました。
(下山さん)
今の規模だからできるのだと思います。もし人員が増えた場合はそのときに考えます。そういう意味ではLINE WORKSは、みんながどう思っているかアンケートを取ったりするので便利です。
通常、稟議書を書いたりすると、1~2カ月ほど時間がかかります。そういった部分も含めて、LINE WORKSを一斉送信するだけで済むのでうまく活用したいと考えています。
━━今後の目標はありますか?
(伊藤さん)
今までは自分のことばかり考えていましたが、これからは全体を把握したいです。たとえば、後輩が困っていたら『大丈夫?』と声をかけたり、自分が困っていた部分もあるので、そういう経験を伝えたりできたらいいなと考えています。
━━これから新しく入社する方に向けてメッセージをお願いします
(伊藤さん)
私が仕事をするときに大事にしてるのは『周りと比べるのではなくて昨日の自分と比べる』ことです。周りと比べると、スキルや経験は全然違うので、自分が劣っていると感じてしまいます。
そうではなく、昨日の自分と比べて『できた自分を褒める』
たとえば、『昨日よりも何個検査できた』とか『今日はプラス10個できた!』そうやって毎日、目標を達成できたら仕事にも前向きに取り組めるのではないかと思います。
会社情報
会社名 | 有限会社オーエス電機工業所 |
所在地 | 〒673-1414 兵庫県加東市上久米120番地の6 |
事業内容 | 製造請負サービス(各種部品の組立・加工・検査・梱包) |
HP | https://os-electric.com/ |
TEL | 0795-44-0601 |
SNS | https://twitter.com/Osdenki1968 |
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